
投資を始めようと思ったとき、「S&P500」と「オルカン(全世界株式)」の名前を耳にする方は多いでしょう。どちらも人気の投資信託で、特に新しいNISA制度でも選ばれることが多いですが、どちらか一方を選ぶべきか、それとも両方に投資すべきか、迷ってしまう人も少なくありません。
そこで今回は、S&P500とオルカンに半分ずつ投資するという選択肢について、その内容やメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
まず知っておきたい!S&P500とオルカンってどんな投資信託?
<S&P500(米国株式)>



S&P500は、米国の代表的な大企業500社に分散投資を行う投資信託です。これらの企業は米国株式市場の時価総額の約80%を占める大型株です。
人気の理由としては、米国のトップ企業に投資できること、500銘柄に分散されているため十分な分散効果があること、そして近年非常に好調なリターンを上げていることが挙げられます。具体的なファンドとして 「Slim 米国株式(S&P500)」が人気です。
過去30年の平均リターンはプラス10.2%と、驚異的な数字を記録しています。


S&P500に連動する投資信託の上位銘柄には、Apple, Nvidia, Microsoft, Amazon, Meta (Facebook), Alphabet (Google)といった、現在のハイテク業界を牽引する企業が並んでいます。





例えば、Appleは約7%を占めているため、1000円投資すれば約70円分がAppleの株に投資されるイメージです。
米国株の強みは、ハイテクの躍進に加え、今後も人口増加が期待できる点にもあります。日本の少子高齢化とは異なり、米国は移民の受け入れなどにより2100年まで人口が増加すると予想されています。
ただし、米国株にも不安要素はあります。例えば、AI分野における中国の台頭など、テクノロジー分野で覇権を争うシナリオも懸念されています。
<オルカン(全世界株式)>
オルカン、正式名称「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、名前の通り全世界の株式に幅広く分散投資を行う投資信託です。先進国や新興国を含む約50カ国、約3000銘柄に投資します。
人気の理由としては、「本気でほったらかしたい」という投資家にとって、シンプルで最適なファンドと認識されている点です。株式の時価総額比率で投資配分が決まるため、経済規模の変化に合わせて自動的に調整(リバランス)されるのが特徴です。これにより、未来永劫バイ&ホールドが可能な「無敵ファンド」とも評されています。



過去30年の平均リターンはプラス7.9%でした。長期的に右肩上がりで上昇している点はS&P500と同様ですね。


オルカンの国・地域別構成比を見ると、現状はアメリカが圧倒的に多く、約64%を占めています。次いで日本が5%、その後イギリスやフランスなどの先進国が続きます。先進国全体で約89.4%、インドなどの新興国が約10.6%です。この比率は時価総額加重平均によって計算されており、時代によって変動します。


オルカンに含まれる国の中で、将来性が期待される例としてインドが挙げられます。インドは人口増加に強みがあり、2023年半ばには人口が世界1位となり、2060年頃には17億人でピークを迎えると予想されています。一方、中国は過去の政策の影響もあり、急速な高齢化と人口減少が見込まれています。米国も人口増加が期待できる貴重な先進国ですが、人口規模では中国やインドには及びません。



インドなどの新興国への期待を含めて投資したいなら、オルカンを選ぶのも良いでしょう。
S&P500とオルカン、半分ずつ投資するとどうなる?



S&P500とオルカンにそれぞれ半分ずつ(例えば、毎月5万円投資するならS&P500に2万5千円、オルカンに2万5千円)投資した場合、資産全体がどのような構成になるか見てみましょう。
オルカン自体にすでに多くの米国株が含まれているため、合計の投資先比率は以下のようになります。
•米国: 約82.1%
•その他の先進国: 約12.6%
•新興国: 約5.3%
つまり、半分ずつ投資した場合、現状は約80%が米国株に投資され、残りの約20%がその他の先進国や新興国に分散されることになります。



これは、思っていた以上に米国株への比重が高く、分散効果としてはオルカン単体よりも限定的になるということを意味します。
また、知っておくべき点として、S&P500やオルカンは時価総額加重平均という考え方に基づいて投資配分が決められています。これは、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者が提唱した「現代ポートフォリオ理論」に基づいたもので、時価総額の大きい企業や国の比率を高めることで、リスクを抑えつつ効率的なリターンを目指せるという理論です。
オルカンはこの時価総額加重平均という理論に基づいて「完成された商品」と言えますが、S&P500を別途保有することで、この時価総額加重平均に基づくバランスが崩れることになります。



つまり
オルカンで全世界に分散投資しているのに、S&P500にも投資することによって”米国株に比率が傾いてしまう”と言うことになります。
ただし、これはあくまで理論的な話です。実際の相場によっては、半分ずつ投資する方が結果的にリターンが大きくなる可能性もゼロではありません。
半分ずつ投資は「あり」?そのメリットとは?



結論として私の意見では、特に投資初心者にとっては、S&P500とオルカンに半分ずつ投資するのは「あり」
その最大のメリットは、精神的な余裕を持てることです。
•将来のパフォーマンスに対する後悔を回避:
投資していると、「もしS&P500だけを選んでいたらもっと儲かったのに…」とか「オルカンにしておけばよかった…」のように、選ばなかった方のパフォーマンスが良かったときに後悔することがあります.。半分ずつ投資していれば、どちらか一方が好調でも、ある程度その恩恵を受けられるため、このような後悔のリスクを減らすことができます。
•投資を始めるハードルを下げる:
どちらか一つに決められずに悩んでしまい、結局投資を始められないよりは、まず半分ずつで始めてみるというのも良い方法です。
•将来的な比率調整も可能:
最初は半々で始めてみて、将来的に「やはり米国株に期待できる」と思ったら、例えばS&P500を7割、オルカンを3割のように、比率を変更することも可能です。
•将来の米国株低迷時に効果を発揮:
過去の歴史を見ると、株式市場で最も高いシェアを占める国は時代とともに変化しています。1900年頃は英国が最も高く、米国は目立たない存在でした。未来は誰にも分かりません。もし将来、現在好調な米国株が低迷するようなことがあれば、オルカンに投資しておいたことによる分散効果が活きてくる可能性があり、半分ずつ投資した効果が発揮されるシナリオも考えられます。
S&P500とオルカンは、約30年前から見ても値動きの方向性はかなり似ています。これはオルカンの半分以上が米国株であるため当然の結果であり、米国経済が世界経済に大きな影響力を持っていることを示しています。しかし、だからこそ、将来の不確実性に備える分散投資の意味合いも出てきます。
まとめ
S&P500とオルカンに半分ずつ投資すると、現状では資産の約80%が米国株に偏ることになり、分散効果は限定的になります。また、時価総額加重平均という理論に基づいたオルカンのバランスを崩すことにもなります。
しかし、特に投資初心者の方にとっては、精神的な安心感を得られるという大きなメリットがあります。将来どちらかのパフォーマンスが良かった場合に後悔するリスクを減らし、投資を始める第一歩として選ぶのは「あり」な選択肢と言えるでしょう。
未来の市場の動向は誰にも予測できません。将来もし米国株が低迷するような局面があれば、オルカンに含まれる他の国や地域への投資がリスクを和らげてくれる可能性もあります。



どちらか一つに決められないと悩んでいる方は、まずは半分ずつ投資から始めてみるのも良いかもしれません。
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