
最近、特定の生命保険会社が若者向けに新たな積み立て保険商品を展開しているというニュースが話題になっています。これは、「預金以上、投資未満」というニーズに応えるものとして注目されているようです。「リスクは避けたいけれども、少しでもお金を増やしたい」、という若者の声に保険会社が応えた形とも言えるでしょう。

しかし、この「預金以上、投資未満」という考え方には、いくつか注意が必要な点があるという指摘もあります。今回は、この保険商品の動向と、賢い資産形成のために知っておきたいリスクとの向き合い方について考えてみましょう。
若者の資産形成ニーズと保険会社の戦略


金融庁のデータを見ると、20代のNISA口座開設数は他の年代に比べて少ないという報告があります。これは、資産運用におけるリスクに対して、若者が比較的慎重な姿勢を持っていることを示唆しているかもしれません。


一方で、生命保険業界は顧客層の高齢化に課題を抱えており、若い世代へのアプローチを強化したいと考えています。20代の生命保険加入率は5割程度と、他の年代より低い状況にあるとのことです。



このような背景から、積立型の保険商品は、若年層を保険という金融商品に触れさせる「接点」として開発された側面があると考えられます。
「預金以上、投資未満」の考え方の難しさ
「リスクは嫌でも資産形成はしたい」という願望は、現実的には難しい側面があると言えます。



例えるならば、「好きなだけ食べたいけれど、スリムな体型でいたい」と言うのと同じくらい無理がある、という比喩が使われています。
もし、資産形成の目的が、人生に大きな影響を与えない程度の「小銭を貯めること」であれば、このような保険商品にも意味を見いだせるかもしれません。しかし、経済的な自由を目指したり、お金に困らない豊かな人生を送ることを目指したりするのであれば、話は別です。
こういった目的のためには、いわゆる「預金以上、投資未満」といったタイプの商品だけでは十分な成果を期待できない可能性が高いと指摘されています。
他人と違う、より豊かな人生を求めるのであれば、適切にリスクを取る勇気が不可欠であると言えます。
保険商品の「利回り」表示をどう見るか
一部の積み立て保険商品では、満期時の変戻率が「106.1%」や「105.2%」のように表示されています。この数字だけを見ると魅力的に映るかもしれません。
しかし、これは払い込み期間や保険期間全体を通じた変戻率であり、これを年利に換算すると、約0.7%程度になるという試算になります。年利0.7%と書くと数字が小さく見え、他の金融商品と比較されやすくなるため、このような表示方法が採用されているのではないか、と指摘されています。
参考までに、現時点での日本国債の金利は、5年もので1.03%程度、10年もので1.48%程度だったとのことです。




このように、表示方法によって受け取る印象が大きく異なるため、金融商品を検討する際は、実質的な年利を確認し、他の選択肢と比較検討することが重要です。
保険、貯金、投資、それぞれの役割を明確に



金融商品を考える上で「保険は保険」「貯金は貯金」「投資は投資」として分けて考えることが重要です。
•保証が必要なら: 死亡保障や医療保障など、万が一に備えるための保証が必要であれば、保険料が割安な掛け捨て型の生命保険などを検討するのが良いでしょう。
•リスクを避けたいなら: 元本割れなどのリスクを極力避けたい場合は、貯金が適しています。ただし、貯金だけでは物価上昇(インフレ)による資産の実質的な価値の低下リスクからは逃れられない点には注意が必要です。
•お金を増やしたいなら: 資産を積極的に増やしたいのであれば、株式や投資信託など、お金を増やすことに特化した投資商品を検討する必要があります。
豊かな人生のための「リスクを取る勇気」
豊かな人生や経済的な自由を求めるならば、適切にリスクを取る勇気が必要です。リスクとリターンは表裏一体であり、より大きなリターンを目指すには、それに応じたリスクを受け入れる覚悟が必要になります。
裕福な人というのは、リスクを避け続けたのではなく、適切にリスクを取り、それをコントロールしてきたからこそ、その資産を築いたのだと考えられています。リスクを取らずにお金持ちになった人を見たことがないとまで言われています。
「リスクを取らないリスク」とは
さらに知っておくべきなのが、「リスクを取らないリスク」という考え方です。何もしなければ安全だと思っていても、社会や経済は常に変化しています。その変化に対応できず、いつの間にか不利な状況に置かれてしまう**「茹でガエル」**になる危険性があるのです。
これもまた、私たちが認識しておくべき重要なリスクの一つと言えるでしょう。
まとめ:賢い資産形成のために学ぶべきこと



「リスクは嫌だけれど、お金持ちになりたい」というのは、残念ながら現実的ではない願望です。
豊かな人生を目指すのであれば、リスクから目を背けるのではなく、どのようにリスクを取るべきか、その方法を学ぶことが大切です。
今の若者たちが、このような「預金以上、投資未満」といったタイプの商品に安易に手を出して後悔しないこと<「保険貧乏」にならないこと>が何よりも大切だと考えます。
自分に合った資産形成の方法を見つけるためには、様々な金融商品について学び、それぞれのメリット・デメリット、そして付き合っていくべきリスクについて正しく理解することが何よりも重要と言えるでしょう。
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