
投資を始めたばかりの頃は、分からないことだらけで不安に感じることも多いでしょう。私自身も、初めの頃は少しのマイナスで怖くなって売ってしまったり、もっと早く正しい知識を知りたかったという経験があります。
この経験から、当時の自分のような投資1年目(投資初心者)の方に伝えたい10のルールが生まれました。これらのルールは、投資の失敗を避け、長期的に資産を育てるための基礎となります
【ルール1】時間は味方、衝動は敵を忘れない
このルールは、「Time is your friend, Impulse is your enemy(時間はあなたの友、衝動はあなたの敵)」という、インデックスファンドの父と呼ばれるジョン・ボーグルの格言に基づいています。オルカン(全世界株式)やS&P500のようなインデックスファンドは、長期運用で利益が期待できる商品です。しかし、相場が好調な時に衝動的に短期売買をしたり、暴落時に感情的に売却してしまうと、期待できる利益を放棄してしまうことにつながります。
長期運用は想像以上に難しいと感じることもありますが、相場が気になりすぎる場合は、積立設定をした上で「気絶投資(放置しておくこと)」も有効な手段です。



ただし、気絶投資を行う場合でも、後に説明するセキュリティ対策は必須となります!
【ルール2】よく分からないものに手を出さない
投資における失敗事例として非常によくあるのが、仕組みや注意点を十分に理解していない商品に手を出してしまうことです。暗号資産などが例に挙げられます。これらは短期間で高いリターンを期待できる話から飛びついてしまいがちですが、投資においてリスクとリターンは表裏一体です。高いリターンだけを見て判断するのは非常に危険と言えるでしょう。
投資先を検討する際は、まず「自分が何のために投資をするのか」「どんな運用をしたいのか」という投資目的を整理することが重要です。例えば、安定した運用を望むなら債券重視の投資信託、年金代わりの配当が欲しいなら高配当ETFなど、目的によって最適な投資商品は変わってきます。
人気の高いオルカンやS&P500についても、選ぶ前にきちんとその中身を知っておくことが大切です。オルカンは先進国の株式約3000銘柄に分散投資しており、S&P500は米国を代表する企業500社に分散投資しています。例えば、S&P500の場合、構成銘柄の上位にはAppleやNVIDIA、Microsoftなどのハイテク株が並んでおり、その比率も公開されています。


投資対象を理解することは、長く運用を続けるための「握力(保有し続ける力)」にも繋がります。
【ルール3】SNSの情報に踊らされない
SNSでは、知り合いの爆益報告を見たり、「あの人が買っているから」という理由で焦って投資を始めてしまうケースがあります。しかし、SNSに投稿されるのは投資で儲かったという良い部分だけであることが多く、その裏には大きく損をしている人も存在します。



SNSは情報収集のツールとしても使えますが、そこで得た情報は鵜呑みにせず、必ず他の情報源(BloombergやCNBCなど信頼できるメディア)で確認する習慣を持ちましょう。
また、「誰かが言っていたから信じる」のではなく、「本当にそうなのか?」と自分で調べて確かめることが非常に大切です。SNSの情報は「玉石混淆(ぎょくせきこんこう)」であると肝に銘じ、情報に踊らされないように注意が必要です。
※玉石混淆:すぐれたもの、つまらないものが、入り混じっていること
【ルール4】積立の効果は後から効いてくる
積立投資は、始めた当初はなかなか利益が出ないと感じるかもしれません。例えば、月3万円を年利5%で積み立てたシミュレーションでは、5年目時点の利益は約24万円ですが、20年目には福利効果もあって約500万円と大きく増加します。


実際のS&P500のデータを見ても、2001年から2020年の20年間で月3万円を積み立てた場合、ITバブル崩壊やリーマンショック後の低迷期には資産総額が元本割れする時期もありました。しかし、この低迷期も積立を続けたことで、相場が回復した2010年以降に資産が大きく増加し、投資元本720万円に対し、1142万円という大きな利益を生んでいます。
積立投資の効果は、長期で続けるほど「後から効いてくる」性質があります。始めたばかりで悩んでいる方も、将来の利益に期待して積立を続けることが大切です3。
【ルール5】自分のリスク許容度を把握する
リスク許容度とは、自分自身が許容できるリスク、つまり資産の価格変動(ブレ幅)の範囲のことです。投資を継続していく上で、価格が大きく下がった時にどの程度まで心理的な負担を受け入れられるかを理解しておくことが非常に重要になります。
あなたはローリスク・ローリターンを望むのか、それともハイリスク・ハイリターンを望むのか、ご自身の投資に対するスタンスを考えてみましょう。下落局面で不安が大きくなることが多い場合は、リスク許容度を超えて投資している可能性があります。その際は、投資額を減らすか、リスクの低い銘柄に変更するなどの検討が必要です。
投資元本の大小によって、価格変動による金額的な影響は大きく変わります。元本が100万円の場合の10%の下落は10万円のマイナスですが、元本が1000円なら100円のマイナスで済みます。
安定した運用を重視したい場合は、債券も選択肢に入ります。債券は基本的に株式よりも値動きが小さく、ローリスク・ローリターンの商品です。債券が組み込まれた投資信託として、三井住友DC年金バランス30(債券重点型)などがあります。この商品は国内債券の比率が高く(55%)、安定した運用が期待できます。過去の例(2020年のコロナショック時)を見ると、全世界株式が-16%の下落だったのに対し、債券重点型投信は-4%の下落にとどまっていました。
ご自身のリスク許容度を把握し、「夜ぐっすりと眠れる」ような余裕を持った運用を続けることが大切です。
【ルール6】暴落は必ず来るものとして準備する
過去の米国株のチャートを見ると、歴史的に何度も大きな暴落を経験していることが分かります。例えば、世界大恐慌(-83%)、オイルショック(-43%)、ITバブル崩壊(-45%)、世界金融危機(-50%)、コロナショック(-20%)などです。近年は10年に一度くらいの頻度で暴落が訪れています。


つまり、暴落は「いつか来るかもしれない」ではなく、「必ず来るもの」「いつ来てもいいように備えておく」安い価格で多くの資産を買い付けられるため、「ラッキーだ」と思って乗り越えやすくなります。相場が好調な時でも油断せず、暴落への心構えを持っておきましょう。
【ルール7】分散投資の大切さを侮らない



分散投資は、投資において非常に重要な考え方です。
これは、「一つのカゴに卵を全部入れると、全て割れてしまうリスクがあるが、複数のカゴに分けておけばリスクを分散できる」という例えでよく説明されます。特定の個別株に集中投資した場合、その企業の業績悪化などで大きな損失を被る可能性があります(例:Intelの株価下落)。
ジョン・ボーグルは、「星草の山の中から1本の針を見つけ出そうとするな。星草の山をまるまる買え」市場全体や多数の銘柄に分散して投資し、長期保有することが優れた投資戦略であるという意味です。
投資信託、特にオルカンやS&P500といった商品は、それ自体が多数の会社の株式を袋詰めにしたものなので、これらの商品を購入するだけで簡単に分散投資を実現できます。



投資初心者は、分散投資の徹底を必ず意識するようにしましょう。
【ルール8】買時を探すと結局買えない
相場の動きを見ていると、「もっと下がるかもしれない」「もう少し様子を見てから買おう」と考えて、結局買付のタイミングを逃してしまうことがあります。



特に下落局面では、どこまで下がるか予測することはプロでも困難です。
現実的に、相場を見て最適なタイミングで投資する「スポット投資」は初心者には非常に難しいと言えます。そこで推奨されるのが積立投資です。積立投資であれば、いつ始めても問題ありませんし、相場が下落した時には安い価格で自動的に買い付けが行われます。「思い立ったらスタート」することが、投資を始める上での重要な一歩です。
【ルール9】自分の投資ルールを持つことが自分を守る
感情的な判断や外部の情報に左右されず、自分の投資ルールを持つことは、投資を長く続ける上で非常に重要であり、自分自身の資産やメンタルを守ることにつながります。



例えば、私自身のルールとして、「貯金と投資の割合を50対50を基準にする」というリスク管理方法があります。
これは、総資産の半分を貯金として手元に残し、残りの半分を投資に回すという考え方です。こうすることで、暴落が来た場合でも貯金がクッションとなり、精神的な余裕を持つことができます。
これから積立投資を始める方へのアドバイスとして、まずは「収入の5%から10%」を目安に積立を始めてみることを推奨しています。月々の積立額は後から変更することも可能です。月3万円を年利5%で積み立てた場合、20年後には約550万円、30年後には約1500万円の利益が期待できるというシミュレーションも示されています。


ぜひ、あなた自身のリスク許容度やライフプランに合わせた投資ルールを考えてみてください。
【ルール10】セキュリティ対策を絶対に怠らない
近年、国内のネット証券を中心に不正アクセスが多発しており、これは現在も続いている問題です。大切な資産がトラブルに巻き込まれることを防ぐためにも、セキュリティ対策は絶対に怠らないようにしましょう。


具体的な対策として、各証券会社が提供しているセキュリティ機能を活用することが挙げられます。例えば、楽天証券ではログイン時の追加認証が必須化されたり、SBI証券でもスマホ認証などの設定が推奨されています。ご自身の利用している証券会社のセキュリティ設定を確認し、可能な限りの対策を講じておくことが重要です。
まとめ
【ルール1】時間は味方、衝動は敵を忘れない
【ルール2】よく分からないものに手を出さない
【ルール3】SNSの情報に踊らされない
【ルール4】積立の効果は後から効いてくる
【ルール5】自分のリスク許容度を把握する
【ルール6】暴落は必ず来るものとして準備する
【ルール7】分散投資の大切さを侮らない
【ルール8】買時を探すと結局買えない
【ルール9】自分の投資ルールを持つことが自分を守る
【ルール10】セキュリティ対策を絶対に怠らない



これらのルールは、一見当たり前のように思えるかもしれませんが、投資を続ける上で非常に重要です。特に投資初期は、感情に左右されたり、情報に振り回されたりしやすい時期です。これらのルールを意識し、長期・積立・分散を基本とした運用を心がけることで、投資の成功に近づけるはずです。
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