「老後2000万円問題」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。しかし、物価上昇や個人のライフスタイル、年金受給額によって、本当に必要な老後資金は大きく異なります。

一体、自分にとって最適な老後資金はいくらなのでしょうか?そして、そのために毎月いくら積み立てれば良いのでしょうか?
今回は、自分に必要な老後資金を徹底的にシミュレーションする3つのステップと、その中で見えてくる重要な気づきを解説します。
ステップ1:年金受給額を確認する
老後資金計画の最初の、そして最も重要なステップは、「自分は将来いくら年金を受け取れるのか」を正確に把握することです。
「意外とこのステップを見落としている人が多い」と動画では指摘されています。例えば、毎月15万円の年金を受け取る場合と25万円を受け取る場合では、65歳から95歳までの30年間で3,600万円もの差が生じます。



自分の年金受給額は、「年金定期便」や「年金ネット」で確認できますので、毎年送られているハガキでチェックしてみましょう!
ステップ2:現在の支出を把握する
次に、**「今、自分は毎月いくらお金を使っているのか」**を具体的に把握します。
これは「漠然とした感覚」ではなく、「具体的な数値」に基づいて出すことが重要です。最も簡単な方法は、過去5年程度の通帳を全て集計し、毎年1月1日時点の預金残高を記録することです。これにより、年間でどのくらい預金が増減しているか、おおよその傾向が見えてきます。



注意点として、以下の要素を考慮しましょう!
• イレギュラーな収入・支出は除外する:
保険の解約返戻金やNISAへの一括投資、車の購入、家のリフォームなど、一時的な大きな入出金は除いて計算します。
• クレジットカード明細だけでは不十分
家賃や住宅ローン、公共料金の口座振替、現金での支払いなど、クレジットカード決済以外の支出も多いため、通帳全体の動きで把握することが大切です。
例えば、手取り年収が312万円(月26万円)で、年間を通じて預金残高が増減しなければ、年間312万円使っていることになります。もし年間30万円預金が増えていれば、実際には282万円しか使っていない、というように具体的な支出額を算出します。
ステップ3:老後資金の必要額を計算する
年金受給額と現在の支出が分かったら、いよいよ老後資金の必要額を計算します。
基本的な考え方はシンプルです。
「年間で使っているお金 − 老後に受け取れる年金 = 資産形成で賄うべき金額」



ただし、この「使っているお金」にはNISAなどの資産運用に回しているお金も含まれる場合があります。
もし毎月2万円をNISAに充てているのであれば、実質の生活費は2万円少ないと考えることができます。
物価上昇率を加味した計算が必須
ここで見落としがちなのが、**「物価上昇率」**です。 今「毎月4万円あれば安心」と思っていても、10年後、20年後の4万円の価値は大きく異なります。物価が上昇すれば、同じ4万円で買えるものの量は減っていくからです。



ここでは物価上昇率2%を仮定したシミュレーションを紹介します。
例えば、現在50歳の夫婦が老後年金とは別に毎月4万円あれば良いと考えていた場合、物価上昇を考慮すると以下のようになります:
• 65歳時点では5.3万円相当
• 100歳時点では10.7万円相当
65歳から100歳までの平均をならすと、月々約7.7万円が必要になるという計算結果が出ました。
収入とライフスタイルによるギャップ
「老後2000万円問題」はあくまで平均値であり、収入や家族構成、生活スタイルによって必要な資金は大きく変わります。
• 収入が少ない人: 現役時代にやりくりできているため、老後も収入がそこまで多くなくてもやりくりできる可能性が高い。
• 収入が多い人: 現役時代の生活水準が高いため、年金だけではそのギャップが大きくなりがちです。現役時代と同じ生活水準を老後も維持しようとすると、非常に多くの金額を投資する必要があることがシミュレーションで明らかになるでしょう。例えば、年収800万円の人が現役時代と同じ生活水準を維持するには、老後月29万円(物価上昇考慮後)が必要となり、65歳までに5,827万円を用意するには、毎月22万円もの投資が必要になる計算です。これは非現実的だと分かります。
シミュレーションで気づく3つの重要なこと



このシミュレーションを実践することで、以下の3つの重要な気づきがありましたね!
1. タイミング投資では自己実現は不可能: 短期的な利益を狙う「タイミング投資」ではなく、毎月淡々と積み立てを続ける長期的な「積立投資」こそが、老後資金形成には不可欠です。
2. 支出の把握とコントロールが極めて重要: なぜこれほど多くの資金が必要なのかといえば、それだけお金を使っているからです。無駄な支出を減らすことは、投資額を増やすことと同じくらい、あるいはそれ以上に効果的であり、努力次第で達成可能です。
3. リスク回避ばかりでは目標達成は困難: 「暴落が怖いから」と安心運用ばかりしていては、目標とする老後資金を準備できない可能性があります。大切なのは、**「ゴールから逆算して、目標達成のために最適なリスクを取ること」**です。ゴールを無視したリスク回避は、順序が逆だと動画では指摘されています。
あなたにとっての「最適解」を見つけよう
老後資金に関する客観的な「正解」は存在しません。大切なのは、インターネット上の一般論に惑わされるのではなく、自分自身の状況に合わせてシミュレーションを繰り返し、納得できる「最適解」を見つけることです。
今の生活水準を少し妥協すれば、現実的な投資額で目標を達成できるかもしれませんし、年利を少し上げるだけで、より理想に近い生活水準が実現できるかもしれません。
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