FXで安定して利益を上げるためには、トレード手法だけでなく、「どの相場でトレードするか」を見極めることが非常に重要です。特に初心者の方は、知らず知らずのうちに危険な相場でトレードしてしまい、なぜ負けたのか分からないまま資金を減らしてしまうケースが多く見られます。

今回の記事では、FXで負ける可能性が非常に高く、様子見が定石となる危険な相場を3つご紹介します。これらの相場を避けることで、無駄な損失を防ぎ、勝ちやすい相場に集中できるようになります。
それでは見ていきましょう。
危険な相場その1:流動性枯渇タイム



危険な相場の一つが「流動性枯渇タイム」です
<流動性枯渇タイムとは?>
流動性(りゅうどうせい)」とは、取引量のことです。
つまり流動性枯渇タイムとは、この取引量が少なくなる期間や時間帯を指します。
これは、市場に参加している人(トレーダーなど)が少ない時に発生します。
<具体的にどんな時?>



具体的には、以下のような時に流動性枯渇タイムになりやすいと挙げられています。
•市場の休日:欧米が休みの時の欧米時間、日本の祝日の時の東京時間など。
•東京時間の早朝:朝6時から7時頃など。
•年末年始やクリスマスなどの大きな連休
<なぜ流動性枯渇タイムは危険なの?>



この時間帯や期間が危険な理由は、主に以下の2つがあります。
1.値動きが乏しい上に、スプレッドが広がるから。
この時間帯は取引量が少ないため、そもそも価格があまり動かない傾向があります。
さらに、「スプレッド」が普段より大きく広がります。
スプレッドとは、通貨を買う時の値段(買値)と売る時の値段(売値)の差のことです。FXでは、取引するたびに必ずこのスプレッド分の費用がかかるため、これは実質的な取引手数料のようなものだと考えられます。



普段ドル円のスプレッドが0.2なのに、流動性枯渇タイムでは2.0のように10倍以上も広がる場合があります。
スプレッドが広がるということは、取引する際にかかる手数料が多くなるということです。値動きが小さい上に手数料が多くかかるため、利益を出すのが難しくなります。
2.急なニュース(ヘッドライン)が出た場合、急変動するリスクがあるから。
この時間帯は「板(いた)」、つまり市場に出ている注文の量が少ない状態です。
注文量が少ない時に、経済に関する重要なニュースや、要人の発言といった「ヘッドライン」と呼ばれる情報が急に入ってくると、少しの注文でも価格が大きく、急激に動いてしまうリスクがあります。



具体的な事例として、ソースでは2019年1月2日のフラッシュクラッシュが挙げられています。


▪これは、年末年始で元々取引量が非常に少ない(流動性が枯渇していた)時に、Apple社の売上低下に関するニュースが伝わったことで、ドル円の価格がわずか3分ほどで3円以上も急激に下落したという出来事です。
▪年末年始で休みだからとトレードしていた知識のない初心者の方が、このような急変動に巻き込まれてしまうリスクがあるのです。
<結論として>
流動性枯渇タイムは、相場がほとんど動かないことが多い一方で、もし何かニュースが出た場合には価格が急激に動く(急落・急騰する)リスクを抱えています。このような時間帯では、トレードをしてもほとんど稼げないどころか、大きな損失を被る可能性が高いため、トレードは絶対に控えることが原則です。


危険な相場その2:ビッグイベント直前直後



FXにおける危険な相場環境の2つ目に「ビッグイベント直前直後」があります。
<ビッグイベントとは?>
ビッグイベントとは、FXの相場に大きな影響を与える可能性のある、重要度の高い経済的な出来事のことです。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
•重要な経済指標の発表日:米国の雇用統計やCPI(消費者物価指数)などが有名です。
•金融政策決定会合:各国の中央銀行が金利など金融政策の方針を決定する会合です。
•要人会見:政府や中央銀行の重要な人物(要人)が行う記者会見などです。過去の事例としては、トランプ大統領の演説なども挙げられています。
これらのビッグイベントのスケジュールは、多くのFX会社の公式サイトやアプリにある「経済指標カレンダー」で確認できます。
<なぜビッグイベント直前直後が危険なの?>
このようなビッグイベントの発表の直前や直後が危険な理由も、いくつか挙げられます。
1.発表前後にスプレッドが急拡大するから
前回の「流動性枯渇タイム」でも説明しましたが、「スプレッド」とは、通貨を買う時の値段(買値)と売る時の値段(売値)の差のことで、実質的な取引手数料のようなものです。
ビッグイベントの発表前後は、市場の様子見ムードや、結果が不透明であることからの警戒感などにより、スプレッドが普段よりも急激に広がります。
スプレッドが拡大するということは、取引ごとにかかるコストが増えるということであり、利益を出しにくくなります。
2.スリッページが多発するから
「スリッページ」とは、注文を出した時の価格(見た目の価格)と、実際に取引が成立した価格(約定価格)に差が出てしまう現象のことです2。
例えば、「この価格で買いたい!」と思って注文ボタンを押したのに、実際に買えた価格は、自分が思っていた価格よりも少し高かった(または売る場合は安かった)ということが起こり得ます。
ビッグイベントの発表直前直後など、価格が非常に速いスピードで急変動している時に、このスリッページは起こりやすくなります。
自分が不利な価格で約定してしまうリスクが高まるため、計画通りのトレードが難しくなります。


3.イベントの直前直後は方向感がまだ固まっていないから。
イベントの結果を受けて、相場がどちらの方向に動くか(上昇か下落か)は、発表されるまで分かりません。
発表直後は、市場の反応が定まらず、一時的に大きく動いたり、すぐに反転したりすることがあります。
例えば、「買い」でエントリーしたらすぐに下がって損切り(損失を確定させること)になり、その後「売り」にドテン(買いから売りに、または売りから買いに切り替えること)でエントリーしたら、またすぐに上がって損切りになる、といったように、短時間で何度も損失を出してしまう「往復ビンタ」に遭うリスクが高いです。
4.ビッグイベント直前直後の超短期の売買は、アルゴリズム取引が主役になっているから。
この非常に短い時間での売買は、人間の判断よりも、コンピューターを使った高速・大量の自動売買(アルゴリズム取引)が中心となっています。
このような高速のアルゴリズム取引が支配的な相場環境で、人間が手動でトレードをしても、かなり不利になると述べられています。
<結論として>
ビッグイベントの直前直後は、スプレッドの拡大、スリッページの多発、そして相場の方向感が定まらないことによるリスクが非常に高くなります。また、超短期ではアルゴリズム取引が優位なため、人間が手を出しても不利になりやすい時間帯です2。これらの理由から、この時間帯にトレードをすることは「もはやギャンブルに近い」とも言われており、トレードは避けた方が良いと結論づけられています。



このような難しい相場環境で無理にトレードするよりも、分かりやすい、自分が得意とする相場が来るまで待ち、そこで集中してトレードすることが、勝率を上げるために重要です
危険な相場その3:値動きが極めて小さい「テーボラレンジ相場」
<テーボラレンジ相場とは?>
「テーボラ」とは、「低ボラティリティ」を略した言葉です。ボラティリティとは、相場の値動きの大きさのことです。
「テーボラレンジ相場」とは、この値動きが極めて小さい、まるで価格が膠着(こうちゃく)して動かない状態の局面を指します。
価格が非常に狭い範囲を行ったり来たりしていて、どちらかの方向(上昇または下落)に進む明確な勢い(方向感)がない相場のことです。
<なぜテーボラレンジ相場は危険なの?>



この相場が危険、あるいは少なくとも利益を出すのが難しいとされる理由はシンプルです。
•方向感が出ていないので、利益が取りにくい相場となるから。
FXは、価格が上昇するか下落するかを予測して、その方向へ動いた時に利益を得る取引です。
しかし、テーボラレンジ相場では価格が狭い範囲でしか動かず、明確な方向感がないため、狙った方向へ価格が大きく動いてくれず、利益を得ることが非常に難しくなります。
小さな値動きの中で無理に取引しようとすると、取引ごとにかかるスプレッド(手数料のようなもの)の負担が大きくなり、さらに利益を出しにくくなる場合があります(これは前回の流動性枯渇タイムの説明でも触れましたね)。
<テーボラレンジ相場をどうやって見抜くの?>



このような相場を見抜く方法がいくつか紹介します。
•ローソク足チャートで確認する。
•ボリンジャーバンドを見る。
•移動平均線の向きを見る。
•ATRといったインジケーター(相場分析に使うツール)を使う。



これらの方法の中でも、「ボリンジャーバンド」を使うのがおすすめです。
<ボリンジャーバンドを使った見分け方>
ボリンジャーバンドは、価格の周りにいくつかの線(バンド)が表示されるインジケーターです。このバンドの「伸び縮み」を見ることで、値動きの大きさ(ボラティリティ)を視覚的に確認できます。
•バンドが広がっている局面:値動きが大きいトレンド相場の可能性が高いです。
•バンドが縮まっている局面:値動きが小さいレンジ相場(テーボラレンジ相場)取引を控えるべきだとされています。


•通常時のチャートイメージ(トレンドやある程度の値動きがある時):
価格が、上下のバンドの間を行き来しながら、ある程度の幅を持って動いている。
ボリンジャーバンドの上下のバンド(線の幅)が、比較的開いている状態。
•テーボラレンジ相場のチャートイメージ(危険な時):
価格が、非常に狭い範囲で、小さなローソク足が密集するように動いている。
ボリンジャーバンドの上下のバンド(線の幅)が、ギュッと狭まっている状態。まるでバンドが収縮して、価格を閉じ込めているように見えるかもしれません。この「バンドの縮まり」が、値動きが小さいテーボラレンジ相場のサインです。
<結論として>
テーボラレンジ相場は、そもそも値動きが小さく、方向感がないため、利益を出すのが非常に難しい相場環境です。また、もしこの膠着状態が破られて急に動き出す場合、その後の方向を見誤ると損失につながるリスクもあります。このような難しい相場はデメリットも大きいので、わざわざリスクを冒して挑む必要は全くないのです。



FXでは、必ず分かりやすい、自分が得意とする相場が来るので、そのような簡単な相場の時に集中してトレードすることが勝率向上につながります。
危険な相場を避け、「待ち」を徹底しよう



いかがでしたか?今回は、FXで初心者・中級者が特に注意すべき「危険な相場」として、以下の3つをご紹介しました。
•流動性枯渇タイム
•ビッグイベント直前直後
•テーボラレンジ相場
これらの相場は、トレードの難易度が高く、スプレッド拡大やスリッページ、急変動による損失拡大など、デメリットが大きいことがお分かりいただけたかと思います。わざわざこういったリスクの高い相場で、難しいトレードに挑む必要は全くありません。
FXを続けていれば、必ず分かりやすく、ご自身が得意とするような「稼ぎやすい相場」が何度も訪れます。
危険な相場では無理にトレードせずじっと待ち、簡単で稼ぎやすい相場が来た時に集中してトレードする。この「待ち」を徹底することが、あなたの勝率を大きく高める鍵となるでしょう。



ぜひ、今回ご紹介した危険な相場を見抜く方法を実践し、賢くトレードを行ってください!






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