資産運用を始める際、「eMAXIS Slim」や「オルカン」といった特定の投資信託が良いらしい、という話はよく耳にするかもしれません。

しかし、自分一人で全てを判断するのは不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
また、銀行や証券会社から「これがおすすめですよ」と勧められた時、それが本当に自分にとって良いものなのか、どう判断すればいいのかと悩むこともありますよね。
このブログ記事では、「これだけは絶対に買ってはいけない」投資信託の種類と、その裏にある金融業界の現実を徹底的に解説します。金融機関の提案を鵜呑みにせず、ご自身の資産を守るための知識を身につけましょう。
「手数料が高い=悪い投資信託」ではない、という大前提



まず、投資信託の手数料について誤解されがちな点を明確にしておきましょう。
一般的に「手数料」と呼ばれるものに「信託報酬」があります。信託報酬が高ければ、運用にかかる費用は高くなります。しかし、「信託報酬が高い=悪い」とは一概には言えません。
例えば、信託報酬が0.1%で過去のリターンが5%の投資信託と、信託報酬が2%かかるが過去のリターンが8%の投資信託があった場合、必ずしも前者が良いとは限りません。むしろ、後者の方がトータルでの利益は大きい可能性があります。この大前提を理解した上で、今回の話を聞いていきましょう。
金融機関が勧める投資信託を「まず疑うべき」2つの理由
では、具体的に「買ってはいけない」投資信託とは何でしょうか?それは、金融機関から「お勧めされた商品」は、まず疑ってかかるべき、という点です。これには主に2つの理由があります。
1. 金融機関の目的は「顧客の利益最大化」ではない
金融機関の最大の目的は、**金融機関として「儲けを取ること」**です。つまり、あなたの資産を最大化させることが目的ではないのです。そのため、あなたの目的と金融機関の営業担当者の目的は必ずしも一致しません。金融機関は「顧客本位の業務運営方針」を掲げ、「お客様の利益最大化のために尽力する」「不利益になることは提案しない」と宣言していますが、その言葉通りに機能しているとは限らないのが実情です。
2. 提案内容が「本当か嘘か分からない」可能性がある
金融機関は、自社の利益を最大化するために特定の商品を推奨する傾向があります。顧客には平等に情報が与えられているはずなのに、証券会社によって売れ筋のランキングが全く異なる、という不自然な現象が起こっているのです。これは、会社として「この商品を売っていく」という方針が出ているからこそ生じる違いだと考えられます。
【衝撃の比較】ネット証券と対面型証券会社で売れる商品が全く違う理由



では、実際に2024年1月の売れ筋ランキングを見てみましょう。
• ネット証券(SBI証券、楽天証券)のランキング傾向
SBI証券と楽天証券の月間売れ筋ランキングを見ると、上位は「eMAXIS Slim 全世界株式」や「eMAXIS Slim S&P500」といった信託報酬が非常に安いインデックスファンドがほとんどを占めています。これらのファンドは、国民が自ら選んで購入する傾向が強く、そのほとんどが米国株を対象としたインデックスファンドであると分かります。
• 対面型証券会社(野村證券、大和証券、SMBC日興証券)のランキング傾向
一方、野村證券、大和証券、SMBC日興証券といった対面型の証券会社のランキングは、ネット証券とは全く異なる傾向が見られます。
◦ 野村證券:半導体に特化したアクティブファンドが1位。
◦ 大和証券:インド株やREIT、債券などがランクイン。
◦ SMBC日興証券:インド株式や半導体関連の世界株式戦略などが上位。
対面型証券会社では、ほとんどインデックスファンドがランキングされておらず、ほとんどがアクティブファンドです。また、特定の証券会社(例: 野村)が自社の特定の商品を推奨している傾向も見て取れます。
なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?情報が平等に得られる現代において、この「不自然な差」は、金融機関の「利益」に直結しています。
投資信託選びで「顧客本位」が機能しない業界の現実



このランキングの大きな違いの理由は、**「インデックスファンドでは金融機関の利益が出ないから」**です。
例えば、1億円分の投資信託が購入された場合、証券会社が得なります。もしあなたが証券会社の社員や経営者だとしたら、どちらの商品を推奨するでしょうか?。
「お客様のため」という気持ちはありながらも、企業として収益を上げるためには、どうしてもインデックスファンドよりもアクティブファンドを推奨する流れになるのは「割と自然な流れ」と言えるかもしれません。
しかし、大半のアクティブファンドよりもインデックスファンドの方が高いリターンを出しているというデータがあるのが事実です。それにもかかわらず、対面証券ではアクティブファンドばかりが上位にランクインしているのです。
このように、金融業界は「まともに仕事をすればするほど儲からない」仕組みになってしまっているのが現状です。そのため、「この人はいい人だから」という理由で銀行員や証券会社の担当者を信用しきるのは危険な時代になっていると言えるでしょう。
特に注意すべき「買ってはいけない」投資信託の5つの特徴
では、具体的にどのような投資信託に注意すべきなのでしょうか。



ここでは、営業担当者から提案された際に特に疑ってかかるべき5つのファンドの特徴を解説します。
1. 新規設定のファンド:実績不明でコンセプト先行
「このようなコンセプトで新しい投資信託ができました!これからこんな伸びが期待されます!」という話は、証券会社にとっては非常に売りやすい商品です。しかし、過去の実績がないため、本当に伸びるかどうか、数字で判断することができません。コンセプトだけで売られている商品は、まず疑ってかかるのが賢明です。
2. テーマ型ファンド:ピークアウト後の提案に注意
半導体、AI、インドのインフラ、医療技術など、特定の業種やテーマに特化した投資信託です。これらのテーマ型ファンドは、多くの場合、すでにそのテーマが注目され、大きく伸びた「ピークが過ぎた後」に設定される傾向があります。話としては非常に魅力的に聞こえますが、「これからさらに拡大する」という売り文句の裏で、実際には長期投資には向いていないことが多いので注意が必要です。
3. 毎月分配型ファンド:福利効果を損ない、元本を取り崩すリスクも
「100万円分の投資信託を買ったら、毎月1%や2%といったお小遣いが入ってきます」という商品は、特に高齢者層を中心に非常に人気で、売りやすい商品です。しかし、これには大きな落とし穴があります。
◦ 福利効果が得られにくい:受け取った分配金を再投資しない場合、長期投資の最大のメリットである福利効果を享受できません。
◦ 「タコ足配当」のリスク:悪いケースでは、運用益だけでなく、投資した元本を取り崩しながら分配金を支払っていることがあります。例えば、100万円が1年後に85万円に減っているのに、毎月1万円(年間12万円)受け取っている場合、実質的には3万円損をしていることになります。これは長期投資には全く向いていません。
4. アクティブ型の債券ファンド:低いリターンが手数料でさらに目減り
債券は、基本的に株式のように大きなリターンは期待できない、ローリスク・ローリターンの金融商品です。しかし、アクティブ型の債券ファンドの場合、高い信託報酬(例: 2%)がかかることで、期待できるリターン(例: 3%)の大部分が手数料で消えてしまい、実質的なリターンが1%程度になってしまうことがあります。
これでは、もはや国債と変わらない、非常に「しょぼい」投資になってしまうため、注意が必要です。
5. 手数料の高いファンド(特にインデックスファンドの比較時)
最初に述べたように、手数料が高いこと自体が必ずしも悪いわけではありません。高いリターンが得られるのであれば、高い手数料も許容できます。 しかし、例えば同じ「S&P500のインデックスファンド」同士を比較する場合、ファンドごとの動きに大きな違いはなく、ほとんど信託報酬の違いしかありません。このような場合、信託報酬が0.2%のS&P500インデックスファンドと0.05%のS&P500インデックスファンドでは、年間0.15%分の差が生じます。同じパフォーマンスが期待できるのであれば、手数料は低ければ低いほど良いため、インデックスファンドを選ぶ際は、特に手数料に注目し、できるだけ低いものを選ぶようにしましょう。
大切な資産を守るために:人任せにせず「自分で考える」ことの重要性
今日の金融業界では、顧客のために誠実に、より良いものを提案しようとすればするほど、業務量は増えるのに売上が上がらないという現象が起こっています。そのため、誰かに提案された商品を安易に信じるのではなく、「なぜこの商品が提案されているのか」「その裏には何があるのか」と疑いの目を持って見ることが非常に重要です。
大切な資産を守るためには、**「自分で調べること」「自分で考えること」「自分で判断すること」**が不可欠です。人任せにしてしまうと、知らない間に「騙されてしまう」「振り回されてしまう」といった事態になりかねません。
このブログ記事が、ご自身の資産運用について深く考え、賢明な判断をするきっかけとなれば幸いです


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