
「60歳で定年退職を迎えて収入が減るけど、老後も今も充実させたい…」
50代・60代のあなたにとって、これは「あるある」の悩みではないでしょうか?S&P500や全世界株式がいいのは知っているけれど、それだけで本当に十分なのか?退職金1000万円を何に投資すれば、この不安を解消できるのか?
この記事では、そんな50代・60代が陥りやすい投資の落とし穴と、「失敗しない」ための具体的な投資戦略について深掘りして解説します。
50代・60代の「あるある」の悩みとは?
多くの50代・60代が直面する現実として、60歳で一度定年退職を迎え、その後再雇用されると収入が大幅に減少することが挙げられます。
例えば、年収800万円だった方が、定年後に同じ仕事をしても年収が6割程度にまで下がってしまうケースは非常に多いのです。 これにより、年間300万円もの収入減となり、老後の生活に対する不安は尽きません。
NISAなどでS&P500や全世界株式といった長期投資はすでに始めているものの、「この減った収入をどう埋めるか?」という切実な悩みを抱えている方も少なくないでしょう。 さらに、退職金として受け取った1000万円をどのように投資すれば良いのか、その答えを求めている方も多いはずです。
50代・60代が陥りやすい投資の「落とし穴」



ここでは、多くの人が「良い」と思って手を出してしまいがちですが、実は「失敗」につながりやすい二つのパターンを紹介します。
1. 「高配当株」への安易な投資
高配当株は、株価の値上がり(キャピタルゲイン)も狙え、毎年配当金(インカムゲイン)が受け取れるため、「一石二鳥」の投資法として魅力的に映るかもしれません。特に「60歳から収入が落ちるから、毎年お金を受け取れる高配当株がいいのでは?」と考える方は多いでしょう。 しかし、安易に高配当株に飛びつくのは、大抵の場合、失敗につながることが多いと指摘されています。
• 十分な配当金を得るには莫大な資金が必要
◦ 例えば、配当利回り4~5%の高配当株で、年間200万~250万円の配当金を得るには、5000万円もの投資資金が必要です。もしそれだけの資産があれば、収入が300万円減っても、ある程度はカバーできるかもしれません。
◦ しかし、多くの人にとって5000万円を投資するのは現実的ではありません。仮に退職金1000万円を全て高配当株に投じても、年間で受け取れる配当金は40万~50万円程度。ここから税金も引かれるため、年収300万円の減少を補うには程遠い金額です。
◦ さらに現実的な投資可能額が500万円の場合、年間配当金はわずか20万~25万円程度。これでは生活費の足しにすらならないでしょう。
◦ つまり、「若い時を充実させたい」という目的で高配当株を選ぶことは、目的と手段が一致しない可能性が高いのです。
2. 巧妙な「投資詐欺」の罠
「自分は騙されない」と思っていても、焦りや不安、解決策を強く求めている時、人は「藁にもすがりたい」という心理から、投資詐欺の被害に遭いやすくなります。 「60歳からの収入減を埋めたい」「短期で収入が得られるものに投資したい」という気持ちが強い時に、「こんなものがありますよ」と信用できる相手から持ちかけられると、普段なら怪しいと思う話でも耳を傾けてしまいがちです。
• 詐欺の具体例と注意点
◦ YouTube広告で著名人のAI音声を使った投資話(例:両学長、節約オタケさん、ホリエモンなどのAIが特定の株を推奨する動画)は全て詐欺です。



解決策が見つからない中で「これならいける」という誘惑に乗りたくなってしまう人間の心理を悪用した詐欺は後を絶ちません。くれぐれもご注意ください。
本当にやるべきこと:投資先ではなく「プランニング」を変える!



では、どうすれば「失敗しない」投資ができるのでしょうか?
「投資先を変えることによって結果を変えようとしない」という考え方が重要です。S&P500や全世界株式のようなインデックス投資は、ほとんどの人にとって最適な投資先であり、これ以上「投資先」に工夫を凝らしても大した変化は得られません。
本当に変えるべきは、「コントロールできない投資先」ではなく、「確実にプラスが得られるコントロール可能なプランニング」**です。



具体的には、以下の3つのポイントを見直しましょう。
1. 年金の受け取り開始時期を見直す
◦ 65歳受け取りではなく、60歳受け取りに変更することを検討しましょう。これにより、定年退職後の収入減を補うことができます。
2. iDeCoやDC(企業型DC)の受け取り方を見直す
◦ もしiDeCoやDCに加入しているのであれば、60歳時点で一括で受け取るか、または60歳から年金として受け取りを開始することを検討してください。
3. 働き方を見直す(65歳以降も働く)
◦ 65歳で完全に引退するのではなく、65歳から70歳まで働くことを検討しましょう。フルタイムである必要はありません。年間100万円程度の収入でも、5年間続ければ500万円になります。これは、老後の資金計画において非常に大きな助けとなります。
シミュレーションで見る「なぜプランニングが大切なのか」



具体的なシミュレーションを通じて、**「高配当株への投資と65歳からの年金受け取り」と、「S&P500への集中投資と60歳からの年金受け取り」**のどちらが、50代・60代の目標達成に寄与するかを比較します。
【前提条件】
• 60歳時点でS&P500に1000万円を積立て済み。
• 退職金として1000万円を受け取る。
• S&P500の利回り:年7%(単利換算)。
• 高配当株の利回り:年4%(単利換算)+配当金年3%。
【パターン1:高配当株+年金65歳受け取り】
• 既存のS&P500 1000万円はそのまま運用。
• 退職金1000万円は高配当株に投資。
• 年金は65歳から受け取る(月15万円)。
• 結果:
◦ 60歳~64歳の期間、高配当株による配当金(年間30万円、月2万5千円)が得られる。
◦ 65歳以降は、S&P500から月10.7万円、高配当株の売却益と配当金から月7.2万円、年金月15万円が受け取れる。
【パターン2:S&P500集中投資+年金60歳受け取り】
• 既存のS&P500 1000万円に、退職金1000万円を加えて合計2000万円をS&P500に集中投資。
• 年金は60歳から受け取る(月11.25万円、通常の65歳受け取りより約24%減額)。
• 結果:
◦ 60歳~64歳の期間、高配当株の配当金はないが、年金を早く受け取れるため、生活資金に充てられる。
◦ 65歳以降は、S&P500から月21.3万円、年金月11.25万円が受け取れる。
【比較結果が示す重要な示唆】
• 60歳~64歳の「若い時」の充実度:
◦ パターン1の配当金(累計162万円)に対し、パターン2の年金受け取り(累計675万円)は圧倒的に多い。
◦ パターン2(年金60歳受け取り)の方が、この期間に約500万円分も多くお金を受け取れており、より「充実した」生活を送れることが分かります。
• 65歳~79歳の期間:
◦ この期間も、年金を早く受け取っているパターン2の方が引き続き有利な結果となります。
• 80歳以降の長期的な視点:
◦ パターン1の方が「若干」有利になる可能性はありますが、その差は非常に小さいことがシミュレーションで示されています。例えば、84歳時点での差は70万円程度に留まります。
◦ これは、高配当株の元本を売却していくと配当金自体も減少していくため、長期的な優位性が思ったほど大きくならないためです。



このシミュレーション結果から、「若い時(60歳~65歳)を充実させたい」という目的を達成するためには、高配当株に投資するよりも、年金を60歳から前倒しで受け取ることが遥かに効果的であることが明らかになりました。
まとめ:投資先よりも「プランニング」こそが成功の鍵
資産形成でうまくいかない人の多くは、「投資先」を変えることによって結果を変えようとします。しかし、本当に大切なのは、S&P500や全世界株式といったインデックス投資を軸にしつつ、**「個人の状況に合わせた緻密なプランニング」**を行うことです。
• コントロールできる部分を変える
年金をいつから受け取るか、何歳まで働くか、iDeCoやDCをどう受け取るかなど、自分でコントロールできる部分を最適化することが、確実なプラスにつながります。
• 具体的なプランニング項目
年金受け取り時期、税金の知識、年間の支出、資産の運用シミュレーション(10年後、20年後いくらになるか、毎月いくら取り崩せるか)などを具体的に把握し、計画を立てることが何よりも重要です。
「ここ(投資先)に投資をすれば、もっと豊かな人生が送れるはず」という安易な考えではなく、自分自身のライフプランと照らし合わせ、コントロール可能な部分から戦略的に見直していくこと。
これが、50代・60代が老後の不安を解消し、「今」も「老後」も充実させるための、最も賢い「失敗しない」投資戦略だと言えるでしょう。
ぜひこの機会に、ご自身のプランニングを改めて見直してみてはいかがでしょうか。
コメント