近年、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、2027年からの掛金上限の大幅アップ(特に会社員の方の引き上げ)が予定されている こともあり、新NISAに加えて本格的に取り組もうと考えている方が増えています。

しかし、「iDeCoは金融機関によって選べる商品が少ない」「正直、投資したいと思える商品がない」 といった悩みを抱えていたり、SBI証券と楽天証券のどちらで始めるべきか迷っている方も多いでしょう。
そんな中、楽天証券のiDeCoに投資家が待ち望んでいた「神アップデート」が正式に発表されました。本記事では、この新しいラインナップの詳細と、ライバルSBI証券との比較、さらにはハイリターン商品をiDeCoで運用する際に**絶対に避けるべき「重大な落とし穴」**について徹底的に解説します。
1. 楽天証券iDeCoの「神アップデート」概要
楽天証券は、顧客のニーズに合わせ、運用実績などをチェックしながら定期的に商品の入れ替えを検討してきました。



そして今回、2026年4月からの新規追加が正式に発表された商品ラインナップの中でも、特に注目すべきは以下の2つです。
1. iFreeNEXT FANG+ インデックス(新NISAでも絶大な人気を誇るグロース株ファンド)
2. 楽天 SCHD(資産成長型)(米国高配当株ETFの王様SCHDに連動)
その他にも、日本を除く全世界に投資可能な**「楽天オールカントリー(日本除く)」や「ゴールドファンド」**など、投資家のニーズに応える魅力的な商品が揃っています。
<📌 スケジュールと除外商品の注意点>
• 新規買い付け開始: 2026年4月上旬からを予定。
• 商品入れ替えの基準: 楽天証券独自の評価指標「ファンドスコア」(過去24ヶ月間の平均値が2.5未満)を基準に、長期的に見て効率的な運用ができていないと判断された商品が除外対象となりました。
• 重大な注意点: 今回の商品入れ替えはまだ確定していません。除外対象商品を保有しているユーザーの1/3以上が反対した場合、入れ替え自体が中止になる可能性があることが明記されています。今後の動向には注意が必要です。
2. ライバル比較:楽天 vs SBI iDeCoの優位性
これまでのiDeCoのラインナップにおいて、全世界株式やS&P500といった王道インデックスファンドの信託報酬は、楽天証券・SBI証券ともに業界最安水準で互角の勝負でした。



しかし、今回のアップデートにより、その均衡が大きく変わる可能性が出てきました。
カテゴリー | 楽天証券(2026年4月〜) | SBI証券(現状) |
グロース株 | FANG+ インデックス (新規追加) | 集中投資型のグロース株ファンドは非ラインナップ |
高配当株 | 楽天 SCHD(資産成長型) (新規追加) | SCHDに対抗できる尖った高配当株ファンドは非ラインナップ |
王道インデックス | 業界最安水準 | 業界最安水準 |
新NISAでFANG+やSCHDに投資しており、「そのパワフルな成長性や安定した増配をiDeCoでも再現したい」と考える方にとって、今回の楽天証券のラインナップは非常に魅力的です。人気商品の充実度という点では、2026年4月以降、楽天証券が一歩リードする形になるでしょう。
3. FANG+と楽天SCHDの魅力



なぜ、この2つの商品がiDeCoでこれほど期待されているのでしょうか。それは、iDeCoの持つ強力な非課税メリットとの相性の良さにあります。
<FANG+ インデックス(ハイリターン/グロース戦略)>
• 投資対象: アメリカのテクノロジー関連大手企業を中心とした10銘柄に均等投資する株価指数(例:NVIDIA、Apple、Amazon、Microsoftなど)。
• 爆発的な成長性: 過去10年間で見ると、S&P 500が約4.6倍の成長率であるのに対し、FANG+は約15倍という爆発的な成長を見せています。
• iDeCoとの相性: FANG+のような高いリターンが期待できる商品を、運用益が非課税になるiDeCo口座で運用できることは、理論上相性が良いとされています。また、iDeCoは60歳まで引き出せない制約があるため、価格変動が激しい商品を途中で売却してしまうのを防ぐ効果も期待できます。
<楽天 SCHD(資産成長型)(安定的な配当成長戦略)>
• 投資対象: 10年以上の連続配当実績を持ち、財務状況などが評価された米国の優良企業100社で構成される指数に連動します。
◦ 選定基準には、キャッシュフロー対負債比率、ROE、過去5年間の配当成長率などが考慮されます。
• 安定性と分散: S&P 500で上位を占めるハイテク株(MAGN 7)は上位銘柄に入っておらず、エネルギー、生活必需品、ヘルスケア、テクノロジーなど各業種に幅広く分散投資できるのが魅力です。
• 増配実績: 運用開始以来、一度も減配せず、13年連続で増配しています。直近10年間の増配率(10.43%)は、ライバルのVYMを上回る水準です。
• 資産成長型のメリット: iDeCoでは配当金や分配金を受け取れないため、今回追加された「資産成長型」は、分配金をファンド内部で自動的に再投資してくれます。これにより、SCHDの増配の恩恵を複利効果を最大限に活かしながら享受できます。
4. 運用後に後悔しないために!iDeCoの「出口の落とし穴」を理解する
iDeCoのメリットとして、毎月の掛金が全額所得控除の対象となり、節税できる点 が強調されますが、ハイリターン商品で運用する場合、出口戦略を誤ると新NISAよりも不利になる可能性があり、これがiDeCoの「最大級の落とし穴」と言えます。



iDeCoで形成した資産を60歳以降に一時金(退職金のような形)として受け取る場合、その金額が退職所得控除額を超えると、超えた部分に税金(所得税)がかかります。
😱 シミュレーション:ハイリターン商品で税金が高くなるケース
もしFANG+のような商品で年17%といった高いリターンを得続けた場合、元本180万円(月5,000円×30年)が30年後に約4,000万円になったと仮定します。
1. 入口の節税メリット: 30年間で約36万円の所得控除による節税効果。
2. 出口の課税: 4,000万円を受け取ると、退職所得控除額(例:加入期間30年で1,500万円)を差し引いても、約248万円の所得税が発生する可能性があります。
3. 結果: 入口の節税額(約36万円)を差し引いても、出口で約212万円もの税金を支払うことになり、出口の税金が非課税となる新NISAで運用した場合よりも、結果的に不利になってしまうケースが発生します。
💡 落とし穴を回避する「スイッチング」戦略
この落とし穴を避けるためには、iDeCoのスイッチング機能を積極的に活用することが推奨されます。
スイッチングとは、現在保有している運用商品を売却し、他の運用商品に買い替えることです。
• 戦略: 資産形成の初期や中期でFANG+のようなハイリターン商品で資産を積極的に増やし、退職が近づき資産額が大きくなった段階で、値動きが安定した債券ファンドなど にスイッチングします。
• 目的: 出口での資産額の増加スピードをコントロールし、受け取り時の退職所得控除内に収めることで、税金を最大限に抑えることができます。
まとめ
今回の商品追加により、楽天証券iDeCoのラインナップは、ライバルのSBI証券と比較しても非常に魅力的になりました。特に、新NISAで人気の高いFANG+やSCHDにiDeCoで投資できるようになったのは、多くの方にとって朗報です。



しかし、iDeCoの真価は、入り口の節税メリットだけでなく、出口でかかる税金までをトータルで考慮した上で、ご自身の投資戦略を立てることにかかっています。
新NISAとのバランスをどう取るのか、そしてiDeCoの強力な非課税・節税メリットを最大化するために、今回追加されたハイリターン商品をどのように活用し、出口戦略としてスイッチングを組み込むか、ぜひ今回の情報を参考に、最適な戦略を検討してみてください。
コメント