米国高配当ETFの代名詞である「SCHD」に手軽に投資できる投資信託は、新NISAの成長投資枠における有力な投資先として、今、多くの高配当投資家から注目を集めています。
特に、**楽天証券で買える「楽天SCHD」**と、**SBI証券で買える「SBI・SCHD」**は、まさに2大巨頭として比較検討されています。

しかし、これら2つのファンドは、名前が似ていて投資対象も同じSCHDであるにもかかわらず、その運用コストや分配金に対する考え方(方針)が大きく異なっていることをご存知でしょうか。
もしあなたが、単に信託報酬の安さや目先の分配金の多さだけでファンドを選んでしまうと、「将来思っていたのと違った」と後悔する可能性があります。
この記事では、楽天SCHDとSBI・SCHDについて、コスト、ポイント、そして最も重要となる分配金方針の違いに焦点を当て、あなたの投資スタイルに本当に合ったファンドはどちらなのか、明確な答えを提示します。
1. 楽天SCHDとSBI・SCHDの基本スペック比較



まずは、両ファンドの基本的なスペックを、特に重要な「信託報酬」「投信保有ポイント」「分配金方針」の3つの視点から比較します。
| 比較項目 | SBI・SCHD | 楽天SCHD | 違いのポイント |
| 信託報酬(年率) | 0.1227% | 0.1238% | SBIがわずかに安い |
| 投信保有ポイント | 年率 0.022% 付与 (投信マイレージ) | ポイント付与の対象外 | SBIは実質コストが下がる |
| 分配金方針 | 堅実分配(安定重視) | 積極分配 | 方針が真逆 |
| 決算(分配金支払い月) | 3月、6月、9月、12月など | 2月、5月、8月、11月 | 支払月がずれている |
2. コスト比較:SBIが有利な理由と長期運用の重要性



投資信託を保有し続ける限り払い続けることになるコスト、すなわち信託報酬は、長期運用においては無視できない要素です。
<2-1. 信託報酬のわずかな差>
現在の信託報酬を比較すると、**SBI・SCHDが年率0.1227%**であるのに対し、**楽天SCHDは年率0.1238%**であり、SBI・SCHDの方が0.0011%安くなっています。
このわずかな差も、20年、30年という長期の運用においては、複利の効果によって最終的に数万円、数十万円といった無視できないリターンの差となって現れる可能性があります。
<2-2. 実質コストを左右する「投信保有ポイント」>
さらに、実質的なコストの面で大きな差を生むのが、ファンドを保有しているだけでもらえる投信保有ポイントです。
• SBI証券では「投信マイレージ」により、SBI・SCHDの保有残高に対して年率0.022%のポイントが毎月付与されます。
• 楽天証券にも同様のサービスはありますが、残念ながら楽天SCHDは現在のところポイント付与の対象外となっています。
ポイント還元分を考慮すると、SBI・SCHDの信託報酬0.1227%からポイント付与率0.022%を差し引いた実質コストは0.1007%まで下がります。現時点では、ポイント還元まで考慮した実質コストの面で、SBI・SCHDに軍配が上がると言えます。
3. 最も重要な「分配金方針」の違いを徹底解説



信託報酬やポイントの差以上に、あなたの将来の資産形成に影響を与えるのが、両ファンドの**「分配金方針」**です。
目先の分配金の多寡だけで優劣を判断するのは危険です。なぜなら、投資信託の分配金は複雑な仕組みで支払われており、「分配金が多い=良いファンド」という単純な話ではないからです。
<3-1. 投資信託の分配金に使われる「4つの財布」>
投資信託は、投資先ETFから受け取った配当金をそのまま投資家に支払っているわけではありません。分配金として使える原資(ファンドの「お財布」)は主に以下の4種類があり、運用会社の方針によってある程度自由に組み合わせて支払うことができます。
1. 配当等収益:ETFから受け取った配当金から経費(信託報酬など)を引いたもの(ファンドの本業による利益)。
2. 有価証券売買等利益:保有資産の売買で得た利益。
3. 分配準備積立金:過去に発生した収益のうち、分配せず将来のために内部に貯めておいた「貯金」。
4. 収益調整金:後から参加した投資家のお金の一部で、既存投資家の分配金が薄まらないよう調整するためのもの。
ETFが稼いだ利益をすべて出すのが原則なのに対し、投資信託はこれら4つの財布を使い、分配額を調整する裁量権を持っています。
<3-2. 楽天SCHD:積極分配(インカムゲイン最大化志向)>
楽天SCHDは、現時点の運用実績から見て**「積極分配」**の方針であると言えます。
運用報告書を見ると、楽天SCHDは「当期の収益」(その期に稼いだ利益)だけでなく、「当期の収益以外」(分配準備積立金や収益調整金)も活用して、分配金を上乗せして支払っていることが分かっています。
👇積極分配のメリットとデメリット👇
| メリット | デメリット | |
| 積極分配(楽天SCHD) | 目先にもらえる分配金が多い。定期的なキャッシュフロー(インカムゲイン)を重視する投資家に魅力的。理想的な利回りを実現しやすい。 | 基準価格が成長しにくい。分配金を出した分だけ基準価格は下がるのが原則。将来の分配金の原資を前借りしていると見られる側面がある。 |
<3-3. SBI・SCHD:堅実分配(安定重視・トータルリターン志向)>



SBI・SCHDは、現時点の運用実績と運用会社(SBIアセットマネジメント)のレポートから、**「堅実配当」「安定重視」**の方針であると言えます。
SBI・SCHDは、本家SCHDから潤沢な配当金を受け取った際も、その場で全て投資家に還元するのではなく、あえてその一部を「分配準備積立金」(3番目の財布:貯金)に内部留保しています。
これは、将来的に本家SCHDの配当金が減ったり、相場が不調になったりした際でも、この貯金を取り崩すことで、投資家に対して安定した分配金を支払い続ける余力を持てるようにするためです。目先の派手さよりも、長期的な安定性を重視した運用方針と言えます。
👇堅実分配のメリットとデメリット👇
| メリット | デメリット | |
| 堅実分配(SBI・SCHD) | 基準価格が下がりづらい。値上がり益(キャピタルゲイン)も狙いやすい。将来にわたって安定した分配金を受け取り続けられる。トータルリターンと安定性を重視。 | 目先にもらえる分配金は、楽天SCHDと比べて少なくなる可能性がある。 |
4. まとめ:あなたに合ったSCHD投信はどちらか?



楽天SCHDとSBI・SCHDは、同じSCHDに投資していても、運用会社の方針理念が異なる全くの別物です。
あなたの投資戦略や目標に合わせて、最適なファンドを選びましょう。
<4-1. 楽天SCHDがおすすめな人>
• とにかく今、1円でも多く分配金を受け取りたい人。
• 定期的なキャッシュフロー(インカムゲイン)を最大化したい人。
• 分配金を生活費の足しにしたいなど、目先の利回りを最重要視する人。
<4-2. SBI・SCHDがおすすめな人>
• 運用コストを最小限に抑えたい人(信託報酬とポイント還元を重視)。
• 目先の分配金だけでなく、長期的な資産の安定と成長(キャピタルゲイン)も狙いたい人。
• 将来にわたり、できるだけ安定した分配金を受け取り続けたい人。
• トータルリターンと安定性を重視する人。
最後に
どちらのファンドを選ぶにしても、目先の分配金の多さだけに惑わされることなく、それぞれのファンドがどのような理念で運用されているのかを正しく理解し、ご自身の投資戦略と目標に合致した選択をすることが、長期的な成功の鍵となります。
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