「同期は結婚を機に地元の公立病院に転職して、定年まで勤め上げたら退職金だけで住宅ローンをほぼ完済できたらしい」
——そんな話を聞いて、なんとなくモヤっとした経験はありませんか。
医療職は、日勤・夜勤のシフトや職場の人間関係、キャリアアップを理由に、他業種と比べて転職を経験する人が多い業界です。より良い条件を求めて転職すること自体は、決して悪いことではありません。
ただし、そこには意外と見落とされがちな落とし穴があります。退職金の多くは「勤続年数」に応じて積み上がる仕組みになっており、転職のたびにこの勤続年数がリセットされるのです。
この記事では、公立病院・私立病院それぞれの退職金相場の違い、そして転職を繰り返すとどれくらい退職金で差がつくのかを、実際のデータをもとに整理します。そのうえで、退職金に頼りすぎない備え方についても、CEとして働きながら資産形成を続けている運営者の視点からお伝えします。
「知らなかった」で将来後悔しないために、まずは仕組みを正しく理解しておきましょう。
公立病院と私立病院、退職金はどれくらい違うのか

自分も同期の話を聞いてから、実際どれくらい差があるのか気になって調べてみました。
<公立病院(地方公務員)の場合>
総務省の調査によると、地方公務員が定年退職した場合の退職金は、平均約2,150万円というデータがあります。看護師に絞ったデータでも、都道府県立病院で約1,400万円、政令指定都市の病院では約1,900万円が相場とされています。地方公務員は「基本給×勤続年数×支給率」という明確な計算式があり、長く勤めるほど確実に積み上がっていく仕組みになっています。
<私立病院の場合>
一方、私立病院は800万円〜2,000万円と、かなり幅があることが分かりました。施設の規模や経営状況によって差が大きく、そもそも退職金制度自体がない病院もあるようです。
【勤続年数が浅いと、こんなに差がつく】
民間病院・クリニックのデータでは、勤続3年目で退職金は30万円前後、5年目でも50万円前後という相場が紹介されていました。これは、定年まで勤めた場合の金額とは、桁が違います。



つまり、「どの病院で働いているか」だけでなく、「そこに何年いたか」によって、退職金は大きく変わるということが、調べてみてよく分かりました。
なぜ転職を繰り返すと退職金で損しやすいのか



ここは仕組みだけなので、シンプルに説明します。
退職金は「積み木」のようなもの
多くの退職金制度は、こんな計算式になっています。
退職金 = 基本給 × 勤続年数 × 支給率



ポイントは「勤続年数」が入っていることです。イメージとしては、同じ職場で働き続けるほど、積み木がどんどん高く積み上がっていくような仕組みです。
転職すると、積み木が崩れてゼロからやり直しになる
ここで問題になるのが、転職です。多くの場合、退職金の勤続年数は転職先の病院に移った時点でリセットされます。 せっかく積み上げた「積み木」が崩れて、新しい職場でまた1段目から積み直すことになるのです。
しかも、支給率は勤続年数が長くなるほど、1年あたりの増え方が加速していく設計になっていることが多いです。つまり、勤続10年の人が転職して「1〜9年目」を2回繰り返すより、同じ病院で10年働いた方が、最終的な退職金は大きくなりやすい、ということです。
<具体的なイメージ>
- 同じ病院に20年勤務 → 積み木がしっかり積み上がった状態で受け取れる
- 5年ごとに転職を4回 → 積み木を4回、1段目から積み直している状態



同じ「合計20年間、医療職として働いた」人でも、転職の回数によって、退職金の最終的な金額は大きく変わってしまう——これが、今回一番伝えたいポイントです。
対策:退職金に頼らない備え方+転職前に確認したいこと
とはいえ、「だから転職しない方がいい」という結論にはなりません。今の職場に不満があるなら、無理に我慢し続ける必要はありません。大事なのは、「退職金は当てにしすぎない」という前提で、自分の資産形成を考えておくことです。
【まずやるべきこと:自助努力での資産形成】
退職金という「将来もらえるかもしれないお金」に頼るのではなく、自分でコントロールできる積立をベースに考えておくのが現実的です。NISAのような非課税制度を使って、毎月コツコツ積み立てておけば、退職金がどうなろうと、自分の資産は着実に育っていきます。(詳しくは以前の記事「夜勤で忙しい医療職のためのNISA入門」で解説しています。)
【転職を考えるときに、確認しておきたい3つのこと】
- 転職先に退職金制度があるかどうか
求人票や面接で聞きにくい場合は、就業規則の開示を求めるのが確実です。- 今の職場の退職金、あと何年でどのくらい増えるか
「あと3年勤めれば支給率が上がる」といった節目が近い場合、転職のタイミングを少しずらすだけで、受け取れる金額が変わることがあります。- 退職金以外の条件(給与・働きやすさ)とのトータルで判断する
退職金だけを理由に転職を諦める必要はありません。月々の給与や働きやすさが大きく改善するなら、トータルではプラスになることも多いです。
今日からできる一歩
退職金は、正直なところ「もらえたらラッキー」くらいの位置づけで考えておくのが、今の医療業界の実情に合っていると思います。転職が珍しくない業界だからこそ、退職金頼みではない資産形成と、転職するときに損をしない情報収集の両方が大事になってきます。
もし今、転職を考えている、あるいは「今の職場の退職金制度、実はよく分かっていない」という方は、一度、転職エージェントに相場感を聞いてみるのも一つの手です。今すぐ転職するつもりがなくても、「聞くだけ」で状況を整理できます。※対応職種・エリアはサービスによって異なるため、登録前に対象条件を確認してみてください。





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